この度、蛋白質研究所同窓会の会長を月原冨武前会長より引き継がせていただくことになりました。
昨年の初頭に岡田眞里子前所長からの依頼をきっかけに、蛋白質研究所の創設者である赤堀四郎先生の研究遍歴を1年余り掛けて辿る機会がありました。
赤堀先生は1922年に東北帝国大学に入学され、今からちょうど100年前の1924年から憧れの真島利行先生の指導の下で有機化学の勉強を始められました。研究テーマは醤油の香気成分の分子構造の決定でした。その香気成分が発酵の過程で生成することを知って発酵化学の勉強をし、さらに酵素化学に興味をもつようになられました。そのような折、医学者でありかつ有機化学者でもあった佐々木隆興博士の 「輓近蛋白質化学の研究」という生化学会関東部会主催の講演会に参加し、その講演に深い感銘を受け、将来蛋白質の研究に取り組もうと決意されました。
学位を授与されてプラハのドイツ工科大学に留学されますが、酵素化学の先進地ヨーロッパでは、酵素は活性基を吸着した蛋白質あるいはコロイドであり、蛋白質そのものではないという考え方が主流の時代でした。
留学から帰ってこられてすぐの1935年、戦前の物資の乏しい中で始めた赤堀先生のタカアミラーゼの化学的研究は、三共(株)からタカアミラーゼ原末の提供を受けつつ戦後も続けられ、1951年に遂にその結晶化に成功します。これを契機に多くの分野の研究者が蛋白質・酵素の研究に参画してきました。その流れを受けて、1958年に大阪大学に全国共同利用研究所として蛋白質研究所が創設されました。関係者のたゆまぬ努力のお陰で多くの成果を上げ、今日に至っております。
蛋白質研究所同窓会は、研究所に在籍された教職員、大学院生、共同研究員等の皆様すべてが会員です。先人の情熱と努力の結晶である蛋白質研究所で、研究に勉学にあるいは運営にご尽力された皆様が世代を超えて共に語り合える交流の場として同窓会がお役に立てればと願っております。
同窓会諸兄姉のご支援、ご協力を賜りますようにお願い申し上げます。
2024年4月18日
相 本 三 郎